芥川賞 第171回 受賞作レビュー|サンショウウオの四十九日が問う存在の境界線

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芥川賞 第172回 受賞作レビュー|サンショウウオの四十九日が問う存在の境界線

芥川賞の発表日は少しそわそわします。、文学賞の発表は映画の公開と同じくらいわくわくするイベントです。

第172回の発表:2024年7月17日、私はリアルタイムでニュースを追いながら、受賞作『サンショウウオの四十九日』の著者・朝比奈秋の名前を確認して、すぐに本を手に取りました。

読み始めてすぐに「これは普通の小説じゃない」と感じた。結合双生児という設定が、哲学的な問いを「体験」として届けてくる。

読み終えた後しばらく、「自分とはどこにいるのか」という問いがまとわりついて離れませんでしたよ。

結論:「私はどこにいるのか」という問いを、文学的な実験と感情の深さで同時に体験させてくれる。芥川賞らしい純文学の醍醐味がここにあります。

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目次

この記事でわかること

  • 第171回芥川賞受賞作『サンショウウオの四十九日』の概要と読みどころ
  • 純文学が苦手な人でも本作を楽しめるかどうか
  • 著者・朝比奈秋という作家の文章の特性と魅力
  • 芥川賞とはどんな賞で、どんな作品が選ばれる傾向があるか

作品基本情報

項目内容
第171回芥川龍之介賞(2024年下半期)
受賞作サンショウウオの四十九日
著者朝比奈秋
発表:2024年7月17日
ジャンル純文学・現代小説
テーマ結合双生児・自己同一性・存在の境界

芥川賞という賞の立ち位置

芥川龍之介賞は、日本の純文学における登竜門とされる文学賞で、年2回(1月と7月)発表されます。

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芥川賞の受賞作、「難しそう」と思って敬遠していた方にこそ読んでほしい。サンショウウオの四十九日は、読後に静かに揺さぶられる作品です。

対象は「新人作家による短編〜中編の純文学作品」であり、実験的・芸術的な傾向の強い作品が選ばれることで知られていますよね。

大衆小説を対象とする直木賞と対をなす存在として位置づけられており、受賞作は必ずしも「読みやすい」とは限りませんが、文学の可能性を更新するような野心的な作品が評価される傾向がありますよね。

第172回の受賞作『サンショウウオの四十九日』は、「結合双生児」という稀有な設定を通じて「存在の境界線」を問う作品として選ばれましたよね。

エンが選ぶ見どころ3選

① 「二人で一人」という設定が生む哲学的な問い

結合双生児という設定は、一見すると奇抜なアイデアに見えます。しかしこの小説を読んでいると、その設定が純粋に「哲学的な問いを体験させるための装置」として機能していることに気づかされます、正直。

「自分とは何か」「個人とはどこから始まりどこで終わるのか」——これらは哲学の教科書に書かれるような問いですが、本作では主人公たちの日常の中に自然に溶け込んでいますよね。

二つの意識が一つの体を共有するとき、「私」はどちらなのか。あるいは、二人ともが「私」なのか。難解な理論書を読まなくても、物語の中で「存在の境界線」を肌感覚で揺さぶられる体験は、純文学ならではの強みではないでしょうか。

設定の奇抜さを、感情的なリアルさで支える作家力に舌を巻きます。読みながら「これは私自身の問いでもある」と感じる瞬間が何度もありました。

「個人」として生きることを、改めて問い直させてくれる一冊です。

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「自分とはどこにいるのか」という問いが読み終わった後もまとわりついて離れなかった。

こういう体験のために本を読んでいる。

② 朝比奈秋の文体が持つ静けさと密度

派手な事件も劇的な展開も、この小説にはほとんどありません。それでも最後まで読み続けさせる力——その源泉が、朝比奈秋の文体にありますよね。

彼女の文章は、静かな水面に小石を投げるような語り口です。大きな波紋を立てず、しかし確実に何かを揺らす。一文一文が密度を持っていて、読み飛ばせるページがほとんどない。

私がとくに印象に残っているのは、主人公たちが内側から互いを感じている場面の描写です。「もう一人の自分」への感覚が、言葉になりきらないままに文章に染み出してくる。

その曖昧さが、かえってリアルに感じられました。読後にじわじわと広がる波紋が、朝比奈秋という作家の真骨頂といえます。読み終えてから数日後に、ふと「あの表現の意味はこういうことだったのかもしれない」と気づくような余韻のある文体は、純文学の醍醐味そのものだと思います。

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読み飛ばせるページがほとんどない。一文一文の密度が高くて、気づいたら何度も読み返していた。

③ 「死」と「生」への視線の優しさ

「四十九日」というタイトルが示す通り、この小説には死が影を落とします。仏教的な時間の単位を題名に据えることで、作品全体に「生と死の間」という感覚が漂っていますね。

個人的に、しかし本作の死の描き方は、暗くなく、むしろ静かで柔らかい。死を前にした人間の揺らぎと、それでも続く日常の小さな出来事が、並走しながら物語を進めていきます。

その描き方が、死を「遠いもの」ではなく「生の隣にあるもの」として受け取らせてくれる。結合双生児という存在が持つ「生と存在の境界」という主題と、「四十九日」という死の時間が、終盤で静かに交差するとき、この小説が何を書きたかったのかがすうっと腑に落ちる感覚がああるんではないでしょうか。

生と死の境界を、主人公の存在と重ねて描く構成の美しさは、読後もずっと心に残ります。

こんな人におすすめ

  • 純文学に興味はあるが入口を探している方:難解すぎず、しかし深い。芥川賞作品の中では比較的読みやすい部類に入ります。純文学デビューとして選びやすい一冊です。
  • 「自分とは何か」を問いたい方:哲学的な問いを、物語という形式で体験したい方に最適です。読後に「自分の存在」について深く考える時間が生まれます。
  • 朝比奈秋という作家を知りたい方:本作が受賞作であり代表作でもあります。まずここから入るのが最善の選択です。
  • 生と死を静かに見つめたい方:死を正面から描きながらも、暗さや重さではなく「優しさ」が漂う作品です。悲しみを抱えた時期に読むと、特別な慰めになるかもしれません。

合わない可能性がある人

  • ストーリーの起伏やドラマチックな展開を期待する方:本作は事件よりも内省が主体の小説です。明確なクライマックスを求めて読むと、物足りなさを感じる可能性があります。じっくりと言葉と向き合う読書スタイルが向いています。
  • 「結論」や「答え」を求める読書スタイルの方:本作は存在の問いを「解決」しません。問いを抱えたまま読み終えることを良しとできない方には、少し難しい読書体験になるかもしれません。問いの余韻を楽しめる方に向いています。

芥川賞とはどんな賞か

芥川賞は1935年に創設された、日本でもっとも知名度の高い文学賞のひとつです。新聞・雑誌に発表された新人作家の純文学短〜中編作品を対象とし、年2回(1月・7月)に選考が行われますよね。

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「存在の境界線」というテーマ、読み終わってからずっと頭に残っています。こういう問いを投げかけてくる作品が好きです。

受賞作は必ずしも万人向けの読みやすさを持つわけではなく、実験的・前衛的な作品が選ばれることも多い。その分、「文学が今どこへ向かっているか」を示すバロメーターとして機能しています。

対をなす直木賞が大衆小説を対象とするのに対し、芥川賞は純文学の最前線を示す賞として、読書好きにとって半年に一度の重要なイベントになっています。

似た作品との比較

作品テーマ・文体本作との違い
サンショウウオの四十九日結合双生児を主人公に「存在の境界」を問う純文学。朝比奈秋の静かで密度の高い文体と、死と生を重ねた構成が特徴。本作の基準として位置づけ。設定の独自性と哲学的な問いの深さが群を抜いている。
コンビニ人間社会の規範に馴染めないまま「コンビニの歯車」として生きることを選ぶ女性の物語。第155回芥川賞受賞作(村田沙耶香)。同じく芥川賞受賞作で「個人と社会」を問うが、コンビニ人間は読みやすさとユーモアのバランスが良く、純文学入門としてさらに入りやすい。
ことり小川洋子の長編小説。小鳥の言葉しか話さない兄と、その兄と共に生きた弟の静かな生涯を描く。「存在の境界」や「生と死」というテーマの近さがある。ことりは長編で穏やかな読後感。サンショウウオの四十九日はよりコンパクトで哲学的。
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生と死の境界を、主人公の存在と重ねて描く構成の美しさ。読後も長く心に残る、久しぶりの文学体験だった。

まとめ

正直、第171回芥川賞受賞作『サンショウウオの四十九日』は、純文学の「難しそう」というイメージを覆す入口になりえる一作ではないでしょうか。

読み終えた後、自分の「存在」についてしばらく考えてしまう——そんな余韻を持つ文学に久しぶりに出会いました。結合双生児という設定が奇抜に思えても、ぜひ最初の数ページだけ読んでみてください。

朝比奈秋の文体に引き込まれたら、最後まで一気に読めるはずですよね。


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この記事を書いた人

こんにちは!「エンタメカフェ」を運営している「エン」です。

物語の世界に触れるたびに、新しい視点や感動が生まれる——そんな体験を多くの人と共有したいという想いから、このサイトを立ち上げました。

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